うた
2009年5月20日
青い空見ている僕も澄みきって鳥になりたいそう思う午後 中川公隆 に触発されて
青空に見られたるかな飛ぶ鳥のもの思ふらし羽ぞ欲しける
2009年5月5日
去く人の姿かたちを重ねつつ暮らし重ねむ去く身であれば Aさん への返歌
作業場に気高く立てるボール盤往にたる父ぞものつくりける
ボール盤1つ残りし作業台血のにほひしつ懐かしきかな
万力ふたつ取り外したる作業台幼き日々の不確かなりき
鑿鋏使いてもよし在りし場に戻せといひて黙りたる父
作業場を片づけたれば思ひ出も消え去りにける連休中日
父親の49日に詠める
2009年3月27日...かの人の三回忌は既に過ぎていた
知識とふ仮想遺伝子伝へたる彼の人往きて三回忌なり
庭先の梅さへ遺伝子残したり仮想なりとて残せましかば
父親の49日に詠める
2009年3月13日
義手義足往にたる父ぞつくりけり評判聞きて吾のつくり比す
職人の往にたる父のつくりしはメンテナンスも込みの品なり
2009年2月24日
かなしくてないてしまうも涙さえ出ない吾あり引きつる身体
2009年2月20日
いくつかのしなきゃならねぇことどもが並列配置また横になる
2009年2月17日
我れあるはサーバたちのおかげなり廃棄機械のメモリー外す
歩道橋階段昇る下肢重く飛び降りる気になれぬ春の日
曇天にちょびっと欠けた月天心市営団地の庭に梅咲く
企図なんぞ許すまじとふ人々のをりたる幸を感ぜざる午後
2009年2月14日
目の中に入れたとしても痛からず父の思いや知らざる吾妹
あを空の手前に焦点合わせれば煌めく点ぞランダムに飛ぶ
煌めける光に混じる細胞のやうなものあり往にて戻りき
濁りたる目にも空こそをかしけれ蒸し暑き風とろけつる脳
無理矢理に前頭葉で疲れしと納めたるこそものぐるほしけれ
居酒屋の大将の顔ママの顔思ひ浮かべて企図止めるなり
浮かぶ顔家族仲間と指導生そは願ひのみ気配すらなし
かじかんだ手を握りしめキーボードひたすら叩きインストールす
吾死すと困るはずなりまずこれを仕上げざらねば誰ぞ仕上げむ
さりながら誰も困らぬことも知る企図忘る法思ひつかざり
寝入りばな考へてしまう死する吾考へるだに悲しくなりき
うとうとと枕ぬらしつ死ぬる法思ひし吾を止める吾あり
酒を飲み煙草吸ひたりしびれつつ消へぬ思ひに身体狂わす
葉巻吸い気分悪くし横になる胃の痛みにて企図忘れたし
ただじっと服薬もせず一日を過ごす父親企図せざりしか
脳内の伝達物質出にくい母遺伝なりしか吾もまた同じ
入浴も片付けもせず一日を暮らす父なり吾に似てゐる
悲しみは酒も煙草も消しはせずただいたずらに層なす痛み
ビルの上赤星ひとつ望月は笠をかぶりて蒸し暑き夜
西日浴び紫煙の先を眺めつつ今日も生きてた不思議を思ふ
自らに対する認知狂ひをり疲れを知らずひたすら眠る
疲れだと前頭葉は認むるも直ぐ義理義務が上書きせしむ
親しげな電子のカード届きたり歳をとこなる咳しつる吾
クマゼミが鳴き終わりたり強烈な西日の中にひそむ秋風
PPの小さな文字に意見する誰であろうと怖いもの無し
プレゼンで読めない文字は密やかに見せたくないといふことなりや
早々とうつとの共存選択す闘う気力とうに失せたり
だらだらとその日に思ふことをする生きる目的すら探せずに
父母や妹すらも思えずば天涯孤独といふ傲慢
酒無しで何もできない事ばかり認知の狂ひ自覚せるなり
狂ひたる認知が故の怖いもの無し自滅するのは嫌ひなれども
企図せども死体の始末考へる一筋残る知識構造
約束を違へてもなほ付いてくる指導生のみ心残りなる
syslogとmailのlogがあふれ出すterminalが反射する顔
ググっても解決策さえ見つからず吾の専門ではないんだぜ
親分は大勘違い専門の立場を生かした助言とは何?
誤解解く努力もできずひたすらに試行錯誤の週末が過ぐ
うつうつとニコチン頼りて試行する錯誤の果てぞ飲酒となりし
自らに課した目標高過ぎし百も承知で挑みつ果てし
エシラスは文科省へのアリバイと割り切ることぞできるはず無き
日々作るアルゴル系のプログラム自己満足の極みなれども
中級のエンジニアだと思ひたし部品創ってなんぼの仕事
部品ども自作ながらもそれなりに組み合わせればシステムなりき
作品となりたる吾のシステムを捨てる部所有り事情も知らず
事情などわかるはずなし継ぎはぎをしても動かす技ぞ持ちける
吾が脳も継ぎはぎをしてほしきもの酒のチカラでやっと動けり
捨てられて大きく欠ける吾が左脳夜明けの月も霞む六月
1日に10万単位の行を読むErrorに怯えwarningは無視
知らぬ間に積み重なりきwarningコマンドすらも受け付けぬ彼
不規則を我慢はできず正確な機械にのめり打ち込める吾
サーバは機械のくせに生意気に個性持ちたりなんでだろなぁ
通院もままならぬままパキシルが切れし副作用慣れるものなり
全身の皮の真下に躍り蠢く
銀色のひょろながきもの
皮膚破り間抜けな顔で眺むるはたそ
ブチプチと皮膚を破りし
間抜け顔恐怖は蟲の数のN乗
背中にも蟲は這いたり
まずは腕
爪折れるまで掻き出しにけり
天井に巨大スライム居座りて水銀垂らす
ヌメる赤爪
取り囲みたるアレルゲンども
張り切っている
吾がゐて
へにょへにょになる
吾をとぢ込む
...へにょへにょの吾を知りたる人はなくますますちぢむへにょへにょの吾
呑んで寝て食欲はなしまた呑んで紫煙の先に漂へる蟲
酔ふことも
足ることもなく
呑む酒で
充つこともなく
ヒトを離れる
口癖しみる
玄関は
ゆるゆるとした
時間が流る
女性の頭
二の腕に
ビミョーに触れき
セクハラならむ
...だって,そう思ったんだもん
故郷の街見つめ来る中年の顔知りたるや頼りなき脳
それぞれに道極めたるはずなりし幼きままのかほ浮かぶのみ
...酔っぱらってました
それぞれに雄蕊雌蕊を延ばしたるツツジサツキの花揺れる午後
久々に良く寝た。
金曜日は,夜中の2時に起きて,ずっと仕事をして,さらに,授業を3コマやって,帰ったのが22時30分,すぐに眠剤を服用して布団に入って,何やらキーボードを叩いていたら久々に眠気が襲ってきて,寝たのが金曜の夜中。
土曜日は,8時から仕事。11時過ぎから通院の準備,ようやく診察を受ける事がでした。
担当医とは違うが,クリニックの責任者の医師だった。
常々,薬の量が多いなぁ,と,思っていたのだけど,やはり,その医師もそのように判断したように思う。
特に,SSRIパキシルの1日の摂取量が日本人の限界量に達している。それで効果が無いのであれば,別の薬に代える時期に来ているだろう。
このひと月,思うように通院できず,度々,SSRIパキシルの服用停止による副作用に苦しめられた。
耳鳴りにふらつき,電気ショック様感覚異常,慣れたと言えば,慣れちまった。
人間の良いところで,慣れるのである。
とは言え,歩を進めるたびにかかとから百会...頭頂部にある経穴...まで全身に電気ショックが走るのは困る。
内耳の奥でかんしゃく玉がなるのも困る。服用停止後,一週間を過ぎると,かんしゃく玉が連続して爆発する,爆竹と言った方が適切かもしれない。
でも,慣れる。
授業をしている時には,気にならないし,恐らく,受講生たちは気付かないだろう。あたし自身,そんな状態であった事すら忘れているのだし。
授業後がすさまじい。
緊張の糸が切れ,部屋に戻る途中はへたり込みたくなる。
土曜日の通院帰りにSSRIパキシルを服用したから,効いてくるまであと2日。
通院の帰り,いつも一服して歌を詠む場所で日向ぼっこを楽しんだ。
風は強かったが,気分が良かった。
服用した,という安心感だろうな。何しろ,副作用はあるのだから。
オリオン座
雲に霞んだ
上弦の
月に照らされ
光る白梅
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なんともミスマッチだな。
晦の明け方に見た幻覚は友がすりより尻押しささやく
金縛り友とかすかに思ふのみ誰とも知れず過去悔いるなり
無いはずの襖が開いて人ぞ来る布団剥がされ寒さで起きる
襖開き見知らぬ3人見下ろしつ何ぞいひたき哀しげなかほ
幻覚とひたすら叫ぶ知識あり睡眠薬かアルコールかも
すでに誰もが
言わざりし
踏張ってしまう
吾が前頭葉
しようとしても
火を点ける
タバコの先も
見えざるよはい
三味の音響く
下通り
肥後の国にて
津軽を聴けり
副作用無しと言はれしパキシルは服用停止で暴れまくれり
処方せん持って走りしすぐにでも服用したし輝ける薬
体内の濃度高まるその日まで続く闘い萎える身体
催促がネット介して押し寄せりただひたすらに丸くなるのみ
空腹も尿意も痛みも我慢しつ毛布抱えて縮まる昼間
闘いは企図せぬことと副作用我慢我慢で数日過ぎる
吾が中の誰が叩くや張りぼての鐘の音こそ尾骶打ちけり
あちこちの空洞たちが鳴動すぼわんぼわんと吾を攻め来る
酒呑みて
何も変わらず
喫煙す
何も変わらず
ただ丸くなる
眠剤に抵抗しつつサーバーのクラスター見るまだ25億あり
真夜中にサーバーたちのご機嫌を伺いながら会議は気になる
結局は終わった頃に起き出したり誰にも知られずサーバーは動く
知らぬ間に欠席裁判として拝命す委員会には出られざりけり
これだけは守り抜きたき授業さえろれつ回らず沈みゆく吾
園児らが帰りつく頃出かけしが夕日に月に送り出さるる
朧にひとつ
月の在り
夜半の散歩は
犬に吠えらる
1割の月かたぶきし
雲の間に
残照をおひ
かなしからずや
ゆふぐれに雨粒ぼつり落つベンチ指に近づく炎のみ見ゆ
全身をアリシン臭で包まれてなおダルダルの吾ぞ悲しき
葉あいからひとひら散りし花びらをしばし眺めて吾を忘れむ
うつうつと馬齢重ねて無力なり紫煙の先ににじむ父母
桜咲き吾が人生を悔やみをり足首つかむ老いた父母
ホテルにて訃報聞きたり窓を開けオリオン探す憎き月影
教室で頷きたる吾吾だけに話しかけたる師ぞ楽しげなれ
教室で皮肉たっぷり吼えてみる所詮真似しかできぬ吾おり
みちのくのホテル窓開け禁破り一服しても沈みわだかまる
死してなほスクールといふなにものか吾のどこかに残りつ燃ゆれ
貧病が身にしみる秋孝行するのも金次第かな
気がつけば夜は白々と既に明け吸殻山に気力埋もれし
咳しても咳止め飲みてヤニ色の痰を吐きつつ魔王の奴隷
意に沿わぬ身体も動かぬもどかしさ憎らしくとも頼らざる得じ
妹の話をすれば押し黙る怒りの目こそ哀しかりけり
積もりたる父の机の書類には孫の写真の埋もれたるあり
四分の三の遺伝子持つ子ゆえ笑顔の写真も無視したる母
緊張をメイクでおほひ妹は機会失ひカーテンの陰
積年の恨みを込めた目ではなく狐狸に出会いし如き父
病室で賢き孫はすんなりと椅子に座りて大人しく聞く
見舞いたる女性は誰ぞ知りつつもとぼけたる父敢えて問ふ母
姉からの電話でしぶしぶ孫認め妹認める母ぞ哀しき
策士とは詐欺師に似たり父母と妹甥を騙しつる吾
連休にゼイゼイ音を聞きながらちらつく入院打ち消しし吾
楽しげな団体客に囲まれて旅先思ひベンチにポツリ
生クジラ戻り鰹に鱈白子田酒1合忘れたき明日
過去の歌読み返したり吾の思い節目節目に繰り返しけり
ゆるゆると母の手を引き父の部屋長き廊下のまたその先の
ニコチンがどろりどろりと浮遊する脳漿の中とろけゆく脳
気がつけばもう一箱が空いており咳止めを飲みまた喫煙す
オリオンの三つ星縦に並びつる夜半の寒さに人思ふ吾
コンビニの帰りに眺むオリオン座夜半の寒さと煙草の煙
電線の間に見ゆるオリオンの三つ星霞みニコチンに酔ふ
外に出て眼鏡の曇る真夏日のボディブローに脂汗うく
真夏日に自転車をこぐ子ども等はもの思ひしか倒れそうな吾
…失礼やヤツだな、つくづく、あたしは
ひたすらに風送りたる扇風機首振る音の鼾に聞こゆ
雨上がり木々に啼く蝉浜風の肌に冷たく文月の終わる
鑑賞文をお送りいただいた。高専の国語の授業を観て詠めるで、7首をお送りした高専の国語の先生からだ。何しろ、書評のプロ、である。
「水面」の二首に寄せて
水面の小ひさき波紋泡をなし喘ぎたる魚術知らぬ吾
残照がやはらかにさす水面と木々から雲へ乱るる蜻蛉
この二首には、「水面」に投影された「吾」の心象風景が詠み込まれている。これらを連作として読んでみたい。
一首目の「水面」は、小さく揺れている。水中に生きる魚であるはずなのに、今はどうだ、水面から姿を現わして喘いでいるではないか。それを眼前にする「吾」の心はとたんに苦しくなるが、なす術はない。魚に対しても、そして自分自身に対しても。下の句は、「魚」と「吾」の重なりが「波紋」と同調して動的に表現されており、巧みである。
やがて魚は水中へと帰っていき、「水面」の波紋もおさまっていく。「吾」の思索の時間がゆるやかに流れていき、揺れていた「吾」の心もやがて風景の一部となって落ち着いていくのだった。
二首目の「水面」は静かである。残照は、「水面」をなだめるかのように「やはらか」でやさしい。この光によって、疲労を体に残したままではあるが、「吾」の心は癒されていく。時が佇んだかのような静謐な夕暮れの風景だ。だが、ふと仰ぐと蜻蛉が乱れ飛んでいるのが「吾」には見えるのだった。人によっては、ただ美しい風景かもしれないが、ようやく整えることのできた「吾」の心には、小さな波紋が再来するのであった。
魚が「喘ぎたる」のも、蜻蛉が「乱るる」のも、それは「吾」の生物への感情移入によった表現であろう。「吾」の小さき生物へのまなざしはとても優しい。そんな優しく傷つきやすい歌詠みの心の「水面」は、日常の喧噪によって幾度も「波紋」におそわれる。時に自然の風物に癒されつつも、完治することのない深い傷は、その度に疼きだすのである。
人々は程度の差こそあれ、誰しも「波紋」と折り合いをつけながら毎日を過ごしている。けれども繊細な感性を持つ人にとっては、うまく遣り過ごせないことの方が多い。葛藤は言葉に置き換えられ、定型におさめられて、外部へと押し出されていく。そして傷みや感動を共有できる読者を得ることで、それは「歌」として自立するのだ。
残照がやはらかにさす水面と木々から雲へ乱るる蜻蛉
水面の小ひさき波紋泡をなし喘ぎたる魚術知らぬ吾
ビデオにて古文読み解く子らを見る常ならざるや私語の少なき
ズボン脱ぎ熱日に耐へつ黙々と課題解けしや楽しかりしや
次々と前の時間の要点を発する子らぞ主人公なり
古文読み意味ぞ知りたき子らが増ゆ鑑賞文へ一歩近づく
苦慮しつつ自分の言葉捻り出すそはすばらしき気付きつる子ら
大声を張り上げずとも子らを御す御された振りも子らの智慧なり
百倍の時間をかけて創りたる授業の意味を子らや知らなむ*
同僚の母堂の訃報吾の母もPDなるぞ未来の重き
花粉症鼻粘膜にヤニ被せ緩慢な死と引き替えにする(8日 11:09:39)
花粉症鼻粘膜にヤニ被せくしゃみ抑えて依存と死を待つ(8日 11:18:26)
…どっちが、いいかな。
水面から首出し泳ぐ亀二匹歩きタバコを睨み咎めし
緑から次第に黒くなる水面紫煙の先で魚の跳ねたり
演舞場舞台に並ぶ志の輔を一番上手いと誉める家元
中年の鬱は脳超え肝臓と降圧剤の調整になる
内科なら酒とタバコは怒りて即禁悩み困りし精神科医は
蝙や蜻蛉飛ぶ池餌となる虫も豊富に飛ぶものなるべし
それなりに人は抱えしそれぞれの病気も吾の人格となり
朝五本夕方十五急速にニコ中目指してまっしぐらかな
ニコチンの興奮だけが沈殿し沈静の浮く脳漿なりき
どろどろのニコチン浸けの脳漿が切れたシナプス無理矢理繋ぐ
学生を十人連れて父親気分翌日ぐったり学生あたり
ただ座りうなずくだけの会議でも前の晩から押し寄せし圧
喫煙所捜し求めつヤニ色の人差し指は鼻こするふり
裏門に吸殻の浮く缶のあり少年野球の小学校の
静かなる逆白波に跳ねる魚釣り人もなく鷺もない午後
四十半ば敢えて覚えた煙り草緩慢な死へ転びまろびつ
四十路過ぎ覚えたタパコくわえつつ燻る煙に見えない明日
四捨五入すれば五十路に近づけりますます尖るオヤジなるかな
次々と日程表をうめながらこの日はわたしの誕生日かも
霞み立ちやはらかな風春の空くしゃみ連続涙に暮れる
地に落ちしパキシルを見る念ずるは胃酸勝つべし拾いて飲まむ
泡盛で眠剤2つ流し込む酔いきれずなお缶ビール開く
リハビリと呼ぶ拷問にじわじわと股が裂かれる金を取られる
体幹の奥に張りたる一本の筋の慟哭腰にこだます
脳漿の魔物がちまちま紡ぎ出す論理頼りの危うい余命
脳漿に潜む魔物がプチプチとシナプスを切り繭を作りぬ
学習の可能性すら失いつヒト属からも遠ざかる吾
泥棒かただの粗忽か札入れがまた見つからず萎びゆく脳
宛名書き封筒詰めに切手貼り達成感も薄く積まれし
少しずつ理屈連ねたメール書く普通の人に戻れる予感
冷湿布操体法にセンネン灸磁石を貼って医者嫌い行く
クィーッカッカッハードディスクが泣いている指突っ込んで掻き混ぜたろか
九台のサーバーたちがそれぞれにあげる悲鳴が頭蓋を叩く
身震いがこの世に吾を引き戻す足先に落つ雫見つめし
浴室に体育座り流れ落つぬるいシャワーと現実感と
泡盛を猪口一つ分ひっかけて出て行く吾を咎めたき吾
秋立ちてガガンボの舞うかんぽの湯空に月こそゆかしかりしか
激痩せの後にドカ食いしてもなお目盛変わらず下腹ぞ出る
ひたひたと勤めに急ぐ人中に交じりて歩む吾ぞ思はじ
わらわらと歩く人々車窓から眺める吾は境に立ちぬ
腸骨の痛み空腹尿意さえ些末に思え側臥し続く
盆だから早めに帰ると書かれたる文字の陰なる笑みや乾きし
音も無く頭が落ちるしっかりと動く手足を吐き気がとめぬ
貧乏は嫌と綴りし父の日記物を思わぬ彼の時の吾
喜々として看病してる母を見る最後の機会と思う中年
失せ物を一つ一つと買いなおし存在すらも治る錯覚
靴下も万年筆も札入れも見つけられない春まだ遠し
眠剤の1mg爆睡と不眠を分けるケミカルな脳
押し寄せる本務と雑務結局は今しなくてもよいことをする
一日に一つのことしかできない布団の中で半日が行く
体調が気分が悪いすぐれない前頭葉が認知し始む
もみあげと無精髭にも白いもの父のあの日が思われる朝
勇猛にハードディスクに挑む足てんてんとした黒い血の跡
検診も医者に行くにもまず起きる生活リズムが前提になる
見渡せば土手一面の春の色アレルゲンでも美しきかな
悲しいと強いて書くしかないんだなじっとしてても涙が落ちる
悲しいと綴る違和感医学書の記述に余るそれの実態
悲しいとひとまず綴り凍りつく焦燥感が自己主張する
言いようのない感情を医学書はとぢこめてゐる巧妙な技
悲しいと書きその文字列を見るたびにズレていくそれ心臓の上
途切れなく車が通るふと思う出てみようかな何かかわるかな
夕暮れにいつもと同じ歩道橋車道に出たら楽になるかな
とりあえずコンピュータに向かう朝これだけはやるが続いて夜
見渡せば思い出せないモノばかり踏んづけ転びスーツに着替え
パキシルか安定剤かコンピュータ歩く姿勢をひそかに変える
飛ばされた焦燥感のかけらから新たに育つ恐ろしきもの
故郷の告別式の時刻過ぎカップ麺開け湯気を見つめる
のろのろと地面が動く行き過ぎる景色は初秋欠けた春夏
自らが何もせずとも進行す焦燥感も吹き飛ばしつつ
ジリジリと胃液が胃壁を消化する十二指腸もとろける悲鳴
疲労でも人は死にたり友人の訃報に明日の我が身を思う
問題と目的書くのは最後にす辻褄合わせこれも職人
安心を味わうまでのタイムラグワシワシと飯喰う父を見る
パキシルが痛みと疲れを追い駆けるテレビで見てる観客ひとり
結局はバス停に着くギリギリの時刻になって家を出る日々
一つずつ発車停車を繰り返しそれが近づき車窓が歪む
クリックで達成感が満たされるもう消費しか頼れない脳
胃薬と鎮痛剤を流し込むエフェドリンにも頼りたくなる
明日こそは絶対に行く前日の決意を込めた予行演習
ひっそりと静まり返る休日の廊下をひたすらうつむき歩く
真っ暗な無人の廊下のしかかる天井と壁扉が重い
とりあえずメールを開き詫びを書く電子メディアに託す危うさ
気がつけば軽い頭痛と嘔吐感既に会議は始まっている
天井が歪んで見えるドクドクと自信が融け出し布団にしみ込む
ゆるゆるとパーキンソンの母を連れ祖母の右手を思う通院
朝起きる食事に新聞家事仕事できていたのは多分別人
クリックで達成感が満たされるでも消費しか頼れない脳
CCU横たわる父ニコニコし声は聞こえる嗚呼意味不明!
とりあえず三十一文字に封じても名付けられない残滓が満ちる
2メートル傾いた視野フラフラと雑踏の中自我の消滅
二度三度聞き返されて縮む声存在すらもノイズに代わる
チョロQの動かし方を教えても必ず前に押し出す父
チョロQを目で追い笑う父と母笑みをはり付けわたしが拾う
澄み渡る意識に自信久々の高揚感の後の違和感
ひたすらに飲み食い続ける懇親会会話が剥がれむき出す自責
老父母にわたしの未来がつぶされるかつてわたしがそうしたように
奥歯噛みベンチに独りどうすればチカラは抜けた?不自由な顔
闘病を自存理由が引き止める寄り添い支えそこにある鬱
グズグズと回る思考できたから良いとは言うが譲れぬ基準
覚悟して臨み必至で発言す他人にはそう見えない悲哀
恐くない出られたできた目も合った快復の自信揺り返しの不安
頑張るなわかるからこそ気遣いに応えねばならぬ矛盾のループ
顔見れば微笑んでしまう義務感にやつれたほほに隠れた恐怖
帰省した時のままの洗濯物ワイシャツ三つ見えない未来
グニグニといたたまれなさを噛み締めつまゆの強張り曲がった背骨
着メロが義理義務仕事と鳴り響き閉じた瞼に浮かぶ悔恨
義務感のかたい決意の目覚ましのかそけき音に沈む後悔
あおい空ほほなでる風何気なく微笑む友も襲い来る夏







